たまに、何も考えずにぼーっとしたくなるときってありませんか?
そんなとき、私がふらっと訪れるのが松戸の戸定邸(とじょうてい)です。
松戸の喧騒から、静けさの世界へ

戸定邸は、松戸駅から歩いて10分ほど。駅前のにぎやかさを抜けると、ゆるやかに続く「戸定が丘」へのスロープが見えてきます。

葺きの門をくぐって敷地に入ると、まず感じるのは空気の透明さ。そして、時間の流れが少しゆるやかになるような感覚があります。
何をするわけでもなく深呼吸してみると、それだけで気持ちがふっと緩んでいくのがわかります。

こちらは戸定邸の玄関。木の香りが漂います。
個人的には、なにかを得ようとして行く場所ではなく、なにかをほどくために行きたくなる場所です。

取材した時期は七五三の季節。甲冑が並び、かわいいおめかし姿の子どもたちも訪れていました。
他にも課外授業の小学生たちと一緒になり、学芸員さんの話に耳を傾けながら、静かに歩く様子がとても微笑ましかったです。
庭園では写生をしている方、カメラを構える方、赤ちゃん連れのご家族の姿も。ここでは、みんながそれぞれのペースで過ごしています。

東屋の下でひと休み。風と光に包まれるだけで、気持ちまでほどけていきます。
(こちらの東屋は飲食不可)
ガイドで知る、徳川昭武という人物

戸定邸では、受付でガイドをお願いできます。時間が合えば、ぜひ体験してみてください。
私も取材のときに案内していただいたのですが、思った以上に面白かったんです。
まず驚いたのは、戸定邸を建てた「徳川昭武(あきたけ)」という人の人柄。江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜の弟ということで、格式ばった人物を想像していましたが、まるで印象が違いました。
昭武は新しいもの好きで、当時としてはかなり先進的な趣味を持っていたそうです。
兄の慶喜と自転車で野田まで出かけたというエピソードには、思わず「えっ、けっこうな距離ですよね?」と声が出ました。「当時はまだ舗装されていなかったからね」と、学芸員さんも感心していたほど。
さらに、昭武はカメラも趣味で、松戸の農家や風景を撮影していたそうです。
邸内では昭武が母を撮影した写真も紹介していて、当時の暮らしぶりが目に浮かぶようでした。
歴史の重みより、人のぬくもりが残る場所
戸定邸は国の重要文化財ですが、「歴史的建造物」としての堅苦しさは感じません。ガイドの話を通して見えてくるのは、昭武という人物の人間くささ。
豪華さや威厳よりも、好奇心と自由さ。その気質が、この場所の空気に自然と溶け込んでいるように感じました。
案内してくださる方によって、語られる内容も少しずつ違います。私のときは建築に詳しい方で、欄間や障子の細工、長押(なげし)の塗装など、普段は見過ごすような部分に光を当ててくれました。
同じ場所でも、ガイドが違えばまったく違う戸定邸に出会える。そんな一期一会の楽しみも、この場所の魅力です。
それぞれの過ごし方ができる場所

春には桜が咲き、風に揺れる花びらが芝生を淡く染めます。夏は木陰がありがたく、緑の匂いと虫の声が心地いいBGMに。

秋には庭の木々が赤や黄に染まり、まるで絵画のような景色が広がります。冬は枝の影がくっきりと映り、静かな時間が流れます。
どの季節にも、その日ならではの光や空気があって、「今日は今日の戸定邸があるな」と思えるんです。


戸定邸に初めて行ったとき、特別な目的もなくふらっと立ち寄りました。それが気づけば、何度も足を運ぶように。
「何をするか」ではなく、「どう感じるか」がゆるやかに積もっていくような時間。そんな場所に日常の中で出会えることを、少し誇らしく思っています。

戸定邸(とじょうてい)/戸定歴史館
住所:千葉県松戸市松戸714-1
アクセス:JR常磐線「松戸駅」東口から徒歩約10分
開館時間:9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
入館料:
戸定邸 一般250円/高校・大学生100円
戸定歴史館 一般150円/高校・大学生100円
共通券 一般320円/高校・大学生160円
※市内在住70歳以上の方、障がい者手帳をお持ちの方と介助者は無料
駐車場:乗用車46台、バス6台



















