流山にある「森の美術館」をみなさんご存じでしょうか。
近隣にはおおぐろの森小学校やおおぐろの森中学校があり、
朝から活気にあふれた子供たちの声が聞こえてきます。
さらに、学校の向かい側には大きな竹林が広がる自然豊かな場所です。
そんな竹林の中に突然あらわれるコンクリートで覆われたこの白い建物こそ、
今回ご紹介する「森の美術館」です。
森の美術館とは?

流山おおたかの森駅西口から徒歩約20分、東武バス(南流山駅行き・クリーンセンター行き)大畔から徒歩約5分の場所にある美術館です。

住宅街と教育施設に囲まれたこの場所ですが……
館長の森さんがこの場所に初めて訪れた時には、広い農地と竹林、そして朱色の実を付けた1本の柿の木しかなかったそうです。
その後、流山おおたかの森駅を中心に都市開発が進み、子育て世代の人口が増加したことで、小中学校やその他の教育施設が次々と建設されました。
現在では、小中学校の生徒たちが授業の一環として森の美術館を訪れたり、
映画やドラマの撮影場所になるなど、大畔地域を代表した施設となっています。
美術館では、森さんが40年以上かけて出会ってきた数々の作品の中から、風景や人物像の油絵を中心に20数点を展示しており、年に3、4回企画展、所蔵展も開催しています。
今回は、2026年3月29日まで開催中の展覧会「橋本 大輔展-記憶の場所-」にお邪魔してきました。
作品の魅力を間近で感じる展示スペース

美術館の中に入ると、コンクリートでできた無機質で洗練された外観の印象とは異なり、
温かな木漏れ日を感じるような明るい展示スペースとなっていました。

中でも、心地の良い光を取りこむ天井に、細長い竹林を眺めることのできる窓が特徴的です。
外側から見た印象よりも内側はずっと広く感じ、開放感あふれるレイアウトで一気に作品の世界にのめり込んでいきました。
実は、この開放感と明るさは森さんのこだわり。
通常の美術館は薄暗く、規制線が張られ、ガラスケースに覆われた作品に照明を当てて展示することが多いのですが、森の美術館では作品を隅々まで楽しんでいただきたいという思いからこのような展示方法にしているそうです。
開催中の展覧会「橋本 大輔展-記憶の場所-」
今回の展覧会では、独立美術協会会員であり、東京藝術大学で博士課程を修了した橋本大輔さんの作品を展示していました。

無機質な物体や廃れた建物を題材に描く一方で、その中に感じる太陽のあたたかな光や、その光を受けて育つ植物にもフォーカスを当てた作品が多く見られました。
特に光の表現が美しく写実的で、まるで大きな窓からその景色を覗いているような説得力と臨場感がありました。
作品を見ているうちに……
ここまで本物とそっくりに描く理由は何なのだろう?写真ではなく絵である意味は?
そんなことを考えさせてくれる不思議な空間です。

先ほどの問いを抱えたまま、好奇心の赴くままに足を進めると……
廃墟に差し込む光が特徴的な作品に出会いました。
人が手入れをしなくなった忘れ去られた場所なのに、どこかあたたかいこの景色。
作品を近くで見てみると、建物の質感にも驚かされます。

繊細でありながらも、場所によっては大胆な筆のタッチを用いており、明るい館内ではそれらを鮮明に見ることができました。
まるで本物の壁のようです。
本物そっくりなのに写真ではなく、絵である意味。それは凹凸にない紙に印刷された写真ではなく、筆でひとつひとつを描くからこそ生まれる質感と、人間というフィルターを通してにじみ出る体験と感情なのではないでしょうか。
橋本さんの作品を見ていると、その場所に吹く風から太陽の光が照らすその場所の温度まで、視覚情報以外のものが見た人に伝わってくるような気がします。
また、作品の広範囲に廃屋や廃墟などが描かれていても、自然の植物や光に目が行く構図となっており、作者の感情を想像せざるを得ません。

奥の展示スペースに進むと、先ほどの雰囲気とは異なり自然の明るさが特徴的な作品が展示されていました。
展示スペースには椅子も置かれており、腰を下ろしてゆっくりと作品を楽しむことができます。
奥に見える松木渓谷を描いた作品は、300×450㎝の巨大な作品で、橋本さんが東京藝術大学に在学中に描かれたものです。

まるで写真のような美しさですが、近くでよく見てみると、木の葉1枚1枚までも繊細なタッチで描いていることが分かります。
この繊細なタッチが加わることで、壮大な自然の迫力を感じさせるのかもしれません。
このほかにも15点ほどの作品があり、それらをゆっくりと楽しむことができました。
カフェスペースで作品の余韻を楽しむひととき

作品を楽しんだ後は、入館チケットを渡してカフェスペースでドリンクをいただくことができます。
このドリンク代は入館料に含まれており、どなたでもご利用いただけます。

窓際の席からは竹林を眺めることができ、穏やかな時間が流れていました。
また、周りには作品が展示されており、画集も自由に読むことができます。
都内の大規模な美術館ヘ行くと、人の多さやせわしなさに圧倒されて、作品の余韻も楽しめずに疲れてしまうような経験がある方も多いのではないでしょうか。
森の美術館では、作品を見て動いた心にそっと寄り添う時間を設けることができました。
すっかり橋本さんの作品に興味を持った私は、画集を眺めながら余韻を楽しませていただきました。
こちらの画集及びポストカードなどのグッズも館内にて販売されています。
また、企画展に因んで画家の方をお招きしたトークイベントなども企画されており、実際に作品を作られたときのお話などをおうかがいすることもできます。

美術館というと、どこか敷居が高いように感じてしまう方も多いかもしれません。
そこで森の美術館では、作品に親しみやすい環境を提供することで、芸術自体を身近に感じて楽しんでもらい、画家の方々と地域のみなさまをつなぐ架け橋としての役割を果たしていました。
私がお邪魔した日も、若いカップルから地元の老夫婦までさまざまな方が足を運んでいました。
また教育機関も近いことから、お子様をお連れのご家族も見られ、老若男女が芸術に触れる機会を提供していました。
教科書を見ているだけでは感じられない本物の作品の迫力や質感。これらを間近で感じることができる経験は、多様な感性と豊かな心を育てることでしょう。
森の美術館は文化拠点としての役割だけでなく、ゆくゆくはこの地域の豊かな社会を形成する一因にもなりうるのではないでしょうか。
森の美術館
住所: 千葉県流山市大字大畔(おおぐろ)315
アクセス: つくばエクスプレス/東武アーバンパークライン「流山おおたかの森駅」 西口から徒歩約20分
東武バス西口ロータリー2番のりば(南流山駅・クリーンセンター行)大畔下車 徒歩約5分
流山ぐりーんバス(西初石ルート)1番のりば おおぐろの森中学校前下車 徒歩約1分
TEL/FAX:04-7136-2207



















